不動産売買に潜むトラブルとは
不動産売買は多くの人にとって人生最大の取引です。そのぶん、トラブルが発生した際の影響も大きく、事前の対策がとても重要になります。ここでは、不動産売買時に起こりやすいトラブルの種類と、未然に防ぐためのポイントを解説します。
契約内容の認識違い
売主と買主の間で、契約内容に対する解釈が異なっていると、引き渡し後のトラブルにつながります。たとえば「設備は現状有姿で引き渡し」と書かれていても、買主は「正常に使える状態」と誤認することがあります。こうした食い違いを避けるためには、契約書の条文を一つひとつ確認し、理解できない点は専門家に相談しましょう。
瑕疵(かし)担保責任
物件の引き渡し後に発覚した欠陥について、売主が責任を負う場合があります。特に中古物件では、雨漏りやシロアリ被害などが見えない場所に潜んでいることも。不動産売買契約では、通常「瑕疵担保責任の期間」を定めており、その範囲内であれば売主に修繕義務が発生する可能性があります。
こうしたトラブルを避けるためにも、契約前に建物状況調査(インスペクション)を実施しておくと安心です。
契約前にできるトラブル対策
不動産取引のトラブルの多くは、契約前の準備や確認で防ぐことができます。以下では、契約に進む前に取るべき具体的な対策を紹介します。
重要事項説明を丁寧に確認する
宅地建物取引士が行う「重要事項説明」は、不動産取引において非常に重要な説明です。内容には、建築基準法上の制限や、都市計画区域の情報、ライフラインの整備状況、そして近隣の騒音や悪臭といった環境面まで含まれています。説明中に疑問点があれば遠慮せずに質問し、その場で解決しておくことが肝心です。
登記簿と現地の一致を確認する
登記簿の情報と現地の状況に齟齬がないかを必ず確認しましょう。たとえば、土地の面積や境界、建物の構造・用途が記載と異なっている場合、取引後のトラブルにつながる恐れがあります。境界が不明瞭な場合は「筆界確認書」や「境界確定測量図」などを用意してもらうことが推奨されます。
契約後・引き渡し前に起きやすいトラブルと対策
契約を交わしても安心はできません。引き渡しまでの間にもさまざまなトラブルが起こりうるため、注意が必要です。
ローン審査の不成立
買主が住宅ローンの審査に落ちてしまうと、売買契約は白紙撤回となることがあります。このようなリスクに備えて、契約書には「ローン特約」を明記しておくのが一般的です。ローン特約とは、「融資が受けられなかった場合、無条件で契約を解除できる」という特約です。
設備や内装の破損
契約後から引き渡しまでの間に、設備の故障や建物の破損が発生することがあります。売主の責任範囲を明確にしておかないと、修理費の負担を巡って揉める可能性があります。引き渡し前に双方で現地を再確認し、記録を残しておくとよいでしょう。
トラブル時の対応と相談先
万が一トラブルが発生した場合、冷静に対処することが大切です。感情的になると解決が遠のいてしまうため、第三者の専門家の力を借りることも視野に入れましょう。
不動産会社への相談
まずは仲介を担当した不動産会社に連絡を入れ、現状を正確に伝えましょう。多くの不動産会社では、トラブル対応の体制が整っており、一定の範囲で解決に向けた調整を行ってくれます。
弁護士や宅建協会の相談窓口
当事者間で解決が難しい場合は、弁護士や宅建協会の相談窓口を利用するのも有効です。特に売主と買主の対立が深刻な場合は、法的な手段を検討する必要もあるでしょう。宅建協会では、不動産に関する無料相談を実施していることもあります。
消費生活センター
消費者としての権利が侵害されていると感じた場合は、各地の消費生活センターも頼りになります。客観的な立場でアドバイスをもらえるため、安心して相談することができます。
安心して不動産取引を進めるために
不動産売買は高額な契約であり、慎重さが求められます。契約書を読むこと、重要事項説明を理解すること、現地の確認を怠らないことがトラブル防止の基本です。少しでも不安があれば、早めに専門家へ相談し、安心して取引を進められる体制を整えましょう。